哲学的命題

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     近所の高圧鉄塔の周りのフェンスには、このような看板が複数ついている。
     「よいこは はいらない」
     
     まあ、これ自体は、子供がふざけて入るのを防ぐ目的の看板であるので良いだろう。
     だが、そのフェンスに四方を囲まれた高圧鉄塔本体には、このような看板がついている。
     
     「よいこは のぼらない」
     
     これは…非常に哲学的な命題ではないだろうか。
     フェンスを越えて中にはいるという行為を、「よいこ」は行わないというふうに、外周の看板によって定義付けされている。
     
     だが、中の鉄塔には「よいこは のぼらない」と、書いてある。
     
     はたしてこれは、誰に向けての警告なのだろうか。
     このフェンスを越えてしまった時点で、最早良い子ではなくなっているので、この「よいこは のぼらない」という注意書きの対象にはなれないのである。
     
     可能なパターンをいくつか考えてみよう。
     〆能蕕ら
     これは誰もが思いつくだろう。
     恐らく、フェンスの建設時からすでに、その敷地内に良い子が入り込んでいた場合である。その場合、彼は「入る」という境界を犯す行為をしていないので、良い子のままである。
     故に、そういう人物が鉄塔を登ろうとする行為を戒めているのだろう。
     
     △弔泙蕕覆げ鮗
     実は、最初は鉄塔だけがあって、「よいこは のぼらない」だったのだが、後に何かあってフェンスを追加して「よいこは はいらない」としたが、鉄塔の方の看板が撤去されずに残っているという説である。
     一番常識的である。
     
     すべてがよいこになる
     ある夜、若い男女がフェンスを乗り越えて鉄塔の根本へとたどり着いた。
     彼らはそこで激しく愛しあい、そして数カ月後、定住した彼らはその場所で元気な子供を産み落とした。
     その子はすくすくと成長し、そして鉄塔に登りたい年頃の良い子になった。
     だが、彼は見た「よいこは のぼらない」その注意書きを。
     そして、彼は登ることを断念したのである。
     鉄塔を断念した彼だったが、今度はフェンスの外の世界へと興味を持ち始める。
     「行くな!」という親の声を無視してフェンスを乗り越えた彼は、振り返って愕然とする。
     そこには「よいこは はいらない」という冷酷とも言える警告。
     良い子である彼は立ちすくんだ。自分は、楽園を追放されてしまったのだ。自分は二度と故郷に戻ることはできないのだ。フェンスの向こうで叫ぶ両親の姿が涙で霞む。
     彼は、はなみずをすすりあげると、グっと歯を食いしばって踵を返し、長い人生へと旅立っていった。
     そして10数年後、もう「よいこ」と呼ばれる年齢ではなくなった彼は、再びフェンスの前に居た。
     今なら、この境界を越えられる。もう「よいこは はいらない」の、呪縛に縛られることはない。再び、自分の生まれた土地に帰れる。
     そう思い、フェンスに指をかけた彼は違和感を感じた。
     経年劣化の為か、フェンスは新しく作り変えられていた。そして、無機質な看板が一枚、こちらを睨みつけるように立ちはだかっていた。
     「危険!高圧鉄塔につき立入禁止」
     その言葉の意味を理解した瞬間、彼の目から大粒の涙が溢れ出していた。
     長年の旅でシワのできた浅黒い皮膚を、涙が次々に流れ落ちていく。
     もう、二度と故郷に帰ることはできない。
     逢魔が時の薄暗い空を槍のように貫く黒々とした鉄塔を見上げて、彼は膝から崩れ落ちていった。
     
     
     というストーリーを、歩きながら思いついたわけである。
     まあ、とりあえず建てた人は、そこまで考えなかったのであろうな…。
     
     では、そんな不幸な良い子がいませんよう
     父と子と聖霊の御名においてお祈り申し上げます。
     
     えいめんっ

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    コメント
    自分が最初に思いついたのはフェンスを登ってしまった子がそこで赦されてその場でよいことなるパターンでした
    • みらー
    • 2012/03/21 11:35 AM
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